「自分の目の下をどうするか」、私のジレンマは日増しに真剣味を帯びてきた。考え詰めた末、日本でこの治療法を行っている医師を探し出してみることにした。その結果、慶応大学医学部形成外科講師の緒方寿夫先生がこの技術を習得している、という情報が入ってきたので、すぐ予約を入れ、緒方先生とお会いすることにした。私のカウンセリングは1ヶ月後になったが、一度治療を受ける決心をすると、一刻も早く、治療を受けたくなるものだ。1ヶ月後、私は慶応大学形成外科の病室で緒方先生に初対面の挨拶を交わしていた。患者の立場になると意外に緊張する。私は自分の担当医の一挙手一投足を観察した。第一印象で緒方先生が知性的でしかも運動神経のいい方であると感じた。次に私は手を見た。外科医は、その手を見ると手術が上手か否か、わかると思っている。緒方先生の手は、しっかりと締まっていて、相当数の手術をこなしているように思われた。緒方先生は予約情報から私が銀座で美容系クリニックを開業していることを知っていたらしく、「自分でもやってみたくなりましたか?医師にはそういうところがありますね」。私は、自分がアメリカでラム先生をお尋ねした際の話をし、緒方先生にこの治療法をどのようにして習得したのかを尋ねてみた。「スペインにこの方法を得意とする先生がいて、その先生から学びました」と緒方先生は教えてくれた。この治療方法には二つの流れがあり、一つがヨーロッパ流、もう一つが米国流である。緒方先生と私は、それぞれ別のルートから習得したわけである。手術法には使う道具を含めて多少の違いはあるものの、結果は同様になることが如実にわかった。その場で治療を受けたかったが、緒方先生が美容治療を行える日時は限られていて、手術日はそれから2ヶ月後になってしまった。ずいぶん先の話だなと思ったが、私と同様の方法で治療しているのは日本では緒方先生以外にはないと知った以上は待つしかないと思った。その治療が行われる日がついにやってきた。この治療法は毎日やっている方法なので、何も説明を聞く必要がなかった。全く緊張しなかったのだが、ベッドの上に横になると何やら落ち着かなくなる。きっと、患者さんたちも、治療を受ける直前にはさぞかし不安な気持ちに苛まれることだろう。私の患者さんの中には前夜は緊張のあまり眠れなかった、という人もいる。勝手知ったるナントカで治療が開始されてから以後の過程は、自分の目の下でいま何かされているのかすべて手に取るようにわかった。緒方先生の治療はスムーズで30分足らずで終了し、痛みもほとんどなかった。2〜3日程度のむくみはあったものの、結果はきわめて良好、いまでは目の下のたるみが消え、かなりすっきりした。治療の全過程を自分で体験することで患者さんの気持ちの変化や、治療法の価値が再認識できたという点で、これは忘れがたい体験になった。医療行為を受ける場合、自分が信頼の置ける医師と出会い、その治療法を理解することが何よりも大切だということをいまさらのように感じたのである。